超暴走軍団 ロード・ウォリアーズ
('85 東宝ビデオ/30分/廃盤)

東宝ビデオが折からのプロレスブームに乗ってリリースした、のかどうかは
サッパリわからないが、とにかく、当時終戦40年を迎えて平和をむさぼる日本は
この恐るべき一作に震撼した!と無闇に煽りたくなる一本。
基本的には、その昔テレビ東京でオンエアされていた『世界のプロレス』中の試合映像と、 ロード・ウォリアーズの完全にデタラメなプロモ映像が代わりばんこに流れるという言うなれば寒いドラマと本番がテレコになってる安いエロビデオ方式というか、非常にオーソドックスな作りの作品なのだがその辺のエロビデオと一線を画しているのは、エロビデオの場合ドラマ部分は早送りしがち(まァそうじゃない向きもいらっしゃいましょうが、オレは早送りします)何の話だよ。

だいたい『その辺のエロビデオと一線を画しているのは』って、当たり前じゃねえか!プロレスのビデオなんだから!まァいいや、その辺のエロビデオと一線を画しているのは、エロビデオの場合ドラマ部分は早送りしてまァその、何と言いますか、いわゆる本筋の、え〜、本番と言いましょうか、その、お〜、ハッキリ言えよ!わかったよ!まァセックス、その辺りを重点的に見がちですが、このプロレスビデオに関しては肝心の試合映像を早送りしたくなるという点なんですねえ。というぐらいプロレス的には大したことないというか、手に汗全然握らないというか、 業界的に言えばショッパイ試合ですいませんといったところで、まァ印象に残らないこと甚だしい。オレもこのコーナーのために全編通して真面目に見たんですが、試合場面を何度見ても印象に残るのは実況の杉浦さんと解説の門馬さんの噛み合わないトークだけというたいへん困った結果になってしまったのでした。

しかし!そうした試合のショッパさを補って余りあるのが、合間合間のプロモ映像なんですね〜!

まずオープニングからして、もう極端にデタラメです。 宇宙空間で謎の大爆発が起こり、「そこから2つの邪悪な精神が放たれた!」(声・塩沢兼人。合掌)という意味不明なナレーションに乗ってホークとアニマルの顔写真がロンドン、パリ、日本、そしてニューヨークの上空を飛び回り、最終的にはシカゴの雑木林に墜落して大爆発(またか)。
立ちこめる白煙の中から現われたのが!そう!
ホークアニマルスタジャン着用)なのだった!

スタジャン着用
どんな登場だよ!でまァ、それからは、そのへんを歩いていた鹿を殺して食べたり、

通りすがりのリムジンを素手で止めたり、


ゴミ捨て場を掘ってみたり、タバスコを飲んだり
おいしいと、
まァ要するに
間が持たなくなってバカなことばかりやってみるのだった。
(こうした一連の流れはまるで田舎の中学生の放課後のようで、非常に微笑ましい。って、こんな中学生、いねえよ)
しかしだんだん腹も減ってきたし、困ったなァと思っているところに
金髪にヒゲ、サングラスをかけて葉巻をくわえた、
ちょっとピエール瀧似の男が現われた!

「ホーホーホーホーホー!」サンタじゃないんだから。

男は右手にブラ下げた鶏肉(生)をホークとアニマルに与え、この実に凶暴極まりない2人を5秒
手なづけてしまう。宇宙からやって来た邪悪な生命が、またずいぶん簡単に調教されたもんだと思うが
このピエール瀧似の男こそが、後にロード・ウォリアーズの
鋼鉄軍師
あるいは
殺人コントロールタワーと呼ばれることになる悪のマネージャー、
ポール・エラリングなのだから、ここは納得するしかない。

そういうわけで、とにかく「こうして、悪のトライアングルがガッチリと組まれたのだ!」
(声・塩沢兼人)。

悪のトライアングル。ホークとアニマルが、やけにちんまり座っててかわいらしい

それから悪のトライアングルは道場に向かい、想像を絶するハードトレーニングを開始する。
といってもホークはわけもなくパンプアップしているのみ、アニマルは
エラリングが壁に描いた下手糞な顔を(その上に「JAPAN」と殴り書きする辺り、
これは日本市場を確実に意識している。実にどうでもいいんだが)掌底で殴りつけて、トレーニング終了。
そういうわけで、本来の意味とは全く違う方向性でハードなのだった。

わけもなくパンプアップ 壁はモルタルっぽいが

だがそれだけで瞬く間に全米マットを制圧するのだから、まさに最強というか何というか、
そろそろマトモに取り合うのも辞めたほうがいいとは思うんだが、
乗りかかった船だから続けよう。ウォリアーズ、その最強ぶりの証明として
『ウォリアーズの超必殺技』というコーナーが設けられているのだが、
下の写真を見ていただければお判りのように、わざわざコーナーを作って解説するほどのことでもない。
とかく最近はプロレスに技がなくなっただとか、猫も杓子もラリアットの一点張りで
試合が退屈極まりないだとか、その手の批判がよく聞こえてくるが、
今を遡ること15年前にそんなラリアット・プロレスを確立させていたウォリアーズは
これはズバリ、時代の15年先を行っていたと言うべきだろう。言えばいいってもんでもないが。
「…ウォリアーズのラリアットには通常でも300kgの破壊力がある。
 しかし、さらに2人が合体することで、その威力は実に400kgにまで達するのだ!」
合体、っていい言葉だよな。実に男のロマンを刺激しますよ。
というわけで、そんな合体ラリアットの様々なバリエーションをご覧ください。



って、全部いっしょじゃねえかよ!
かつて前田日明がヨーロッパで「七色のスープレックス」を習得して凱旋帰国したという、
その必殺技のバリエーション、これはまァ、そのラリアット版と…言えねえよな…どう考えても…
だから真面目に練習しろって言っただろ!

え〜まァ、そんなわけで前述のショッパイ試合が散々繰り広げられるのだが、
とりあえず実況の門馬さんが
「この頭の真ん中だけを残して、後を刈り込んでいるのがアニマル、
 そして逆に真ん中だけを刈っているのがホーク、ということで
 この2人を見分ける目印にしていただきたいと思います」という台詞だけは印象に残ったのだった。

頭の真ん中だけを残して、後を刈り込んでいるほう
逆に真ん中だけを刈っているほう。いい顔してます

以上、これでロード・ウォリアーズのすべてがわかる、と信じつつ進めてまいりましたが、
ここに来て結局、こっちの想像を超えてバカだということ以外、何が何やらサッパリわかりません。
でもまァ頭でわかってどうのこうのという話ではないので、ここは涙を飲むしかない。

そして、夜中の通販番組もかくやというぐらい安いBGMが延々と流れるなか、

この凄いやつらを地上に解き放ったのは誰だ!
地獄の覇者魔王サタン、お前なのか!
まさか、天と地の支配者、聖なる神よ、あなたでは!?
いずれにしても、全身凶器と化したこのふたり!
地球を荒廃に追い込むまで闘い続けるであろう、アニマルとホーク!
いま、彼らの暴走は、始まったばかりである!


という、やけに大仰なナレーションとともに本作は幕を閉じるのだった。
何も聖なる神もねえ、こんな連中を送り込んでくるほどヒマではないと思う。
そんなわけで見ているこちらの頭の中が荒廃に追い込まれてしまったのだが、
「いま、彼らの暴走は、始まったばかりである!」という台詞のとおり、
そう!このビデオには続編があったのである!さらに我々を腰砕けにさせる、恐るべき続編が!
というところで、いくらなんでもこんなもの2本も続けて見る気にはならんので、
続編に関してはまた後日。それまでは皆さんもタバスコを飲んだり、
壁に穴を開けたりして楽しくお過ごし下さい。ああ疲れた。


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