ダブルダイナマイト、映画を語る(1)
しのぶ!ジャニーズ!酢豚!

O / 大矢  H / ホーク

O 東京タワーのノッポンているじゃん。
H ああノッポン。
O ピンク色のブヨブヨした長細い生き物。
H ノッポンのボールペン売ってんですよね。
O そう売ってる売ってる、ノッポンの着ぐるみとかいるんだよね。
H いますね、何でオレたちこんなこと知ってんだろ?ノッポンのボールペンがちょうど何かピンク色でハンディなサイズで、ちょうどこれをこうフッと入れてみたり……
O どこにだよ。
H そしてキャップが尻のとこで取れなくなっちゃったりして……
O 尻かよ!
H で、映画『東京タワー』ね。
O これがねえ、何かあの、まあ地味な映画で、何か大宇宙戦争が起こるとかそういうことではないんですけど。
H モスラとか出てこないんですか。
O 出てこないんですよ。
H ギャオスも出てこない。
O それがヒットしてるっちゅうんでね、まあ何の映画だべ、と思って見に行ったら要するにあのー、奥様の不倫映画。
H あら、そう。
O ええ。
H 誰が出てるんです。
O 黒木瞳。
H 黒木瞳か。
O 黒木瞳がまあ主人公ですよね。あと誰だっけ、ジャニーズの若造。
H え、津川雅彦とか出てないんですか?
O 映画としてはそうなのよ。あのー、もう本当に渡辺淳一の世界。
H ナベジュンでしょ?
O 僕らの好きなナベジュンの世界なんだけど、それがジャニーズの若造になってるわけですよ。でこのジャニーズの若造がいちいちムカつく奴で、まあ学生なんだけど凄いバブリーなの、舞台仕立てが。大金持ちの息子なんだけど何かすぐに、不倫してるくせに泣くの。
H は?
O ベロベロ泣くの。
H んぅ〜!(ハーベイ・カイテルの物真似で)
O ダハハハハハハハハ!違うんだよ、それが何にもないのにさあ、ただ2人でクラシックのコンサートとか聞きに行くとさ、ボロボロボロって泣いてんの。
H ……ちょっとアレですか、情緒不安定。
O 「 僕は〜、美しいものを見ると〜、涙が出てしまうんですよ〜、ボロボロボロ」
H うまいこと言いやがって……
O で抱きついて。よしよしとか言われて、ここにいてほしい〜とか、帰らないでほしい〜とか言ってセックスするわけですね。
H それだ!
O ブッハッハッハッハッハッ!それでセックスするときもね、ラブホとか行かないのよ。もう六本木界隈で話が進むわけだから、東京タワーの見えるとこで。
H ホテルアイビスとか。
O ブハッハッハッハッハッ!親父が建築事務所か何か持ってて、親父役が小林清志。
H 小林清志……
O 次元大介。
H えっ?あ、そうですか。
O いや、声しか出てこないんだよ。
H 声の出演!?えっ何、じゃあフレームの外から声が聞こえてくる……それチャーリー・ブラウンの先生じゃないですか。
O ワハハハハハハハハハ
H チャーリー・ブラウンの先生は声しか出てこない、プワプワプワプワ(物真似)そんな感じ?
O そんな感じ。プルルップルルッて電話の音だけなんですよ、出演は。
H ええ声で。
O ええ声で。「親父……事務所使わせてくれ」って言うと、
H 「ルパン、今度はヤバイぜ」
O そんな感じでね、アジトを使わせてくれって言うと親父が「わかった。お前もいろいろ切羽詰ってるんだな、ハッハッハ……」って言って、親父の事務所でセックスするわけですね。ズッパンズッパン。
H それまた建築事務所でしょ。
O そうそうそう。ソファーなんかあって雨、外ザーみたいな。で、これがまあ粗筋の一つ。まあ大きな流れの一つなんだけど。
H 黒木瞳と若造の。
O 話がね。もう1人、若造の連れのまた若造がいて、これもジャニーズなんですけど、手ぇ出してるわけです、どっかの奥さんに。
H あ、これは黒木瞳ではなく。
O 寺島しのぶ。
H あー。
O 何かもう、ちょっとトウの立った。
H はあ。
O ギラッとしたオバハン。
H オバハン。
O で、これが田舎のね、いいとこの家なんだけど、旦那が冷たい。
H うん。
O 旦那が冷たいんだけどいやらしい。宮迫って人がやってるんですけど、いやらしくね。オカンと一緒に住んでて、そこでもう欲求不満の塊なわけですよ。
H 寺島しのぶが。
O そうそう。ムラムラギラギラしてて、で旦那の宮迫がね、やっぱりたまにセックスするわけです。でそのセックスする時の合図が。
H はあ。
O 『東京タワー』ってお洒落な映画だと思われてるんですけど、セックスする時の合図が「今夜な、分かっとるな、酢豚や、酢豚」
H は?
O と言いながら寺島しのぶのケツをギューッと握るわけですよ。
H はあ。
O そうすると寺島しのぶはひとり田舎の家で、酢豚をジャーッと作ってるわけですよ。それがセックスの合図。だけどもう、そういう状況が嫌なわけです。
H まァそれ食って。
O 食ってからするわけですけど、そういう状況が嫌で、ひとり煮詰まって酢豚作ってるの。で、こっから先本当の話なんだけど、ジャニーズに電話するわけ。「もう今会いたいの、今会って私を抱いて!」でもジャニーズもつれない男だから、何かさあ、バイトで忙しいから行けないんですよ。
H うん。
O 「でも今来て!今来て!」っていう寺島しのぶの顔のアップ!ジャニーズのだるそうな顔のアップ!で、燃えたぎる酢豚!
H ワハッハッハッハッハッハッ!
O 酢豚ジュワー!
H ワーハッハッハッハッハッハッ!
O 「今来て!」「行けないよ!」
H しのぶ!ジャニーズ!酢豚!
O そう、しのぶ!ジャニーズ!酢豚!しのぶ!ジャニーズ!酢豚!
H ダハハハハハハハハ!『悪魔のいけにえ』みたいだ。
O 酢豚がどんどんアップになって。
H ブハハハハハハハ!
O でアップになっていって、ジャニーズが「もう切るから!」ってプッと切ると、プーップーッて携帯が切れたしのぶのアップ、で酢豚の最後のアップ、でどうしようと思ったら画が台所の引きになって、酢豚大炎上!ボワーン!ファイヤー!
H は?
O 酢豚が大炎上すんの。
H はあ……
O それを見て、寺島しのぶはそこにへたり込む。
H うん。
O っていう映画。
H ……ちょっと待ってください、その頃黒木瞳は。
O 何かね、泣いてるジャニーズと2人でいいことしてんですけどね。騎乗位で、今度は。
H 生醤油?
O それは讃岐うどん食うやつでしょう。生醤油は。
H ぶっかけて……
O ダッハッハッハッ!
H 下品だなあ!
O ほんと下品な映画でねえ、もう寺島しのぶはジャニーズとの縁を断ち切ってね、フラメンコに精を出すわけですよ。
H はあ。で酢豚また作って。
O そう、酢豚は……まあ作んないんですけど、フラメンコに精を出すわけですね。でジャニーズもまあ清々したよ!とか言ってるわけですけど、ある時車で流してたらフラメンコの発表会場の前を通りかかってしまうわけですよ。
H はあ。
O で、何だ?やってんじゃん何か。そういえばあの奥さん元気かなあとか思って、デッカイ花束抱えてフラメンコの会場に入っていくと、何かフラメンコのギターがボロロンと鳴ってダンダカダンダカダンと。
H 踊り狂ってる。
O 踊り狂ってるんですよ、しのぶが。
H ウヒャハハハハハハ!
O それを見てジャニーズもまたポワーンとしてしまうわけですよ。
H ああー……焼けぼっくいに。
O 焼けぼっくいに火がついちゃうわけですね。もうハートがポッポと燃えさかって、でもまあ花束を置いてね。車で、何かバイトで買ったオープンカーに乗って、オープンカーなんて乗ってんですよ!学生の分際で。
H 花形満みたいですね。
O それは中学生ですけど、ブワーンと走らせてたら、何か後ろから物凄い勢いで車が追跡してくるんですよ。
H はあはあ。
O ブォーンと!で何だろうと思って、そしたらジャニーズの車に後ろからきたワンボックスがボワーンと追突するわけですよ。
H はあ。
O ケツを掘ってくるんですよ、もうガンガンガンガン掘って、ジャニーズの車はガードレールにぶつかってダーン、大破。
H 大破。
O 大破。でジャニーズ降りて何すんだこの野郎!って行くと花束持った寺島しのぶがまたそこで仁王立ちですよ。
H じゃあそのワンボックスでオカマ掘ってきたのは、寺島しのぶ。
O 寺島しのぶが追っかけてきて。でもうその辺にいた人たちがワーッて集まってきて、お互い罵り合ってんだけど目が笑ってんの。
H ……はあ。
O 何か通じ合っちゃって。

(同時に)……気持ち悪い。
ワハハハハハハハハ!

H 何だその映画。
O どんな映画だよこれ、と思って、六本木ヒルズで。
H そんなのが流行ってんですか。
O 平日の昼間に見に行ったの。取材がキャンセルになったんで見に行ったから、男の人とね。ライターの人と見に行ったんだけど。だけどそれが半分以上入ってるのよ客が。
H 昼間っから。平日でしょ?
O まあジャニーズ目当てでね、若い女の子が入ってくるんだけど、みんなポカーンとして見てたよ。
H そりゃそうでしょうねえ……でその頃、黒木瞳は何してるんです。
O 旦那がねえ、金持ちの旦那がいて、これが岸谷五郎なんですよ。『仁義の墓場』ですけどね、物凄い無表情で。これがじゃあ別荘で黒木瞳とジャニーズがイチャイチャしてると。
H ええ。
O まあ騎乗位でバッコンバッコンやってると、そうすると……まあ乳首は見せないんですけどね。
H そこがねえ……昔の東映の津川雅彦とか出てきたやつはねえ、ドッカンドッカン出てたじゃないですか。
O まあいいや、今日は誰も来ないから、とか言ってやってると車がキーッ、なんて音がするわけですよ。
H 来ちゃったじゃねえかよ!言った端から。
O で岸谷五郎が現れるわけです、ズシャッとこう車から降りてくるんだけど、もうそん時の効果音が、ドーーーンて音が鳴るわけです。
H それでジャニーズは押入れとか隠れますか。
O 隠れるんですよ。
H やっぱり!ほんとに。
O ほんとに。でドーーーン、もうホラー映画みたいな演出ですよ。ズジャッ、ズジャッ、と足からイン、みたいな感じで。
H ほう。
O で現れてね。無表情でもう、黒木瞳はこんな乱れた服装で、「どうしたの?何しに来たの?早かったのね」「こんなに早く仕事が終わるとは思わなくてねえ」って無表情で。岸谷五郎が。でフッと視線をやると、食べ散らかした食い物が2人分。
H さっきの脱いだパンツとか。
O そうそうそうそう。「ネズミがいるようだな……ネズミは駆除しないとねえ」
H はあ!
O ってひとこと言って、何かそこで大バトルが行われるかと思ったらまあそれはそれで終わっちゃうんですけどね。
H 何だそりゃ。
O だけど最後、やっぱりバトルがありました!
H ありましたか!
O ありました。ジャニーズと岸谷五郎が。呼び出すんです、ジャニーズが岸谷五郎を。巨大なプールの飛び込み台の上に!
H はあ!
O どうしてそんなとこに呼び出すのかわかんないんですけど。
H 飛び込み対決とかするんですかね。
O そこで岸谷五郎はジャニーズをボコボコにして。
H はあ!
O 高飛び込み台の上から突き落とします。ボーン!で、こう何食わぬ顔で、何かパーティ会場に戻るわけですね。黒木瞳も。でパーティ会場に戻るとずぶ濡れになったジャニーズがフラフラになって現れて。何か抱きついて。黒木瞳に「やっぱり僕はあなたと一緒にいたいんです!」みたいな。
H ……そんなこと言ったって、さっきボコボコにされてねえ、プールに突き落とされて。凄い根性だなあ。
O 何かねえ、だけどまあ、ほんとにおばさんに都合よく話は作られてますよ。
H まァいろんなことがあっても、そのジャニーズみたいな可愛い男の子が。
O そうそうそうそう。慕ってくっついてきて、何かやらしてくれると。そんな映画でしたよ。それが流行ってんだって!意味わかんない、そんな酢豚映画。
H 東京タワーじゃないじゃないですか。酢豚でしょ?
O たまーに映る、東京タワーが。
H だけどそれ以上に酢豚が映ってるわけでしょ?
O ハハハハハハそう、キーワードは酢豚。俺の説明が悪いのかもしれないけど、嘘ひとことも言ってないから。やりまくってるだけの映画でしたよ。やりまくって酢豚。やりまくって追突。やりまくってフラメンコ。
H ハハハハ、やりまくってプール。
O でもほんと、ここで津川の出番ですよって何度も言いたくなりましたよ!大人のいやらしいセックスを見せてくれよ!
H ねちっこい、何かねえ。こっちが吐きそうになるような……
O だからジャニーズじゃなくってさ、ここは津川・長門の兄弟タッグが。
H ワハハハハハ!鼻息荒い感じのね。
O ねえ!
H 鼻毛出ちゃってるよみたいな、もう何か……
O もちろん長門は腹上死ですよ。でもうオロオロする奥様。そこに岸谷五郎が現れてドーーーン!
H ワハハハハ一緒だ!そして飛び込み台から突き落とされる津川雅彦みたいな。
O 全裸のね!ドボーン!プカプカ白いお腹が浮いてるとか、そういうのが見たいなあ!
H そこに「」!みたいな。
O ワハハハハハハハハ!
H そしてふんだんに濡れ場が。
O そして最後は蝋人形のアップがドーーーンで終わりっていう。でも僕らもやっぱりねえ、これから女口説くときはビショ濡れですよ。
H とりあえずね!頭っから灯油か何かかぶって。
O ワハハハハハ!
H 「火ぃつけんぞ!」
O 俺たち別にベトナム戦争に抗議してるわけじゃないんだから。
H 「帰るんだったら火ぃつけるぞ!」
O ワハハハハハハハ!
H それで帰っちゃったりして。
O 俺たち別に武富士を襲撃してるわけじゃないんだから。
H でもズブ濡れねえ。
O ズブ濡れはいいと思うよ!
H オレはじゃあ、酢豚を作ります。

(2005年2月14日放送『スゴイ唇だな〜と思って見てたのが松本清張だった! 』より)



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